富士フイルムの高級コンデジX70を使い始めて2ヵ月が経ちました。
撮像素子がAPS-Cというデジイチクラスのスペックを持ちますが、ズームなし、手ブレ補正なしという、かなり尖ったカメラです。
率直な感想としては、「凄くいいカメラ!」に尽きるのですが。
細かな部分も説明しておきます。
さすが「色のフジ」
富士フイルムは、アナログ時代からずっとカメラのフィルムを作ってきたメーカーですから、写真の「色」については他社以上に拘りとプライドがあるというのが世間一般で聞こえてくる印象です。
ただ、実はこの「色」について、僕も細かく説明はできないのです。 なんとなく色味が違うなぁという印象はあるのですが、それが良いものなのかどうかまでは正直よく分かりません。
でもですね、このカメラを使うようになってはっきり変わったのが、
『RAW現像をしなくなった。』
という点なんですね。
僕はNikon D5500でも、Panasonic LX100でも、撮った写真はいつもRAW現像をして露出やホワイトバランスを調整していました。撮ったままの状態だと、なんか気に食わないというか、ちょっといじりたかったんですよ。 でも、富士フイルムX70で撮った写真は「まぁ、このままでいいか。」と思いまして、気づいたらRAW現像しなくなってました。 なにがどう変わったのか、まだよく説明できないんですけれど。
なんか違う。
完璧とまではいかないのだけれど、手間をかけて加工しなくてもいいかな、って思う仕上がりなんですよね。 たぶん、解像度だとか、色合いだとか、ダイナミックレンジだとか、そのへんが全て絡み合って、写真としての見栄えが良いってことなんでしょう。
これはねぇ、自分で何枚も撮っていかないと分からない感覚かもしれません。 僕も買う前に作例とか見てもいまいちピンときませんでしたから。 でも、自分で撮りだすと違いが分かってきます。自分で何枚も撮っていると、今までも似たような物や構図で撮っているので、他のカメラとの違いを感じやすいんでしょうね。
富士フイルムのカメラは、市場のシェアは少ないですが、コアなファンが存在します。それの理由がまさに「フジにしか出せない発色だから」というものです。
自分で撮ってみてこそ分かる「フジの色味」。
あまりよい例じゃないかもしれませんが、僕の撮った作例を載せておきます。
コンデジなのに撮像素子がAPS-C
このカメラを検討するような人には撮像素子の話は説明不要でしょうから、細かな説明は省きますが。
X70に採用されているAPS-Cというセンサーサイズは、一般的に普及しているデジタル一眼レフと同等のものです。 このセンサーサイズが、コンパクトカメラに搭載されてるんですからね。
2016年10月22日現在、APS-C採用のコンデジは、このX70とリコーのGRシリーズのみ。 デジイチ並の画質をコンデジで求めるならば、この二択だけです。
APS-Cになると1画素あたりのサイズも大きくなりますから、光を取り込む面積も広くなり、高感度にも強いです。 屋内で撮る場合でもフラッシュなしで普通に撮影できますし、どうしても暗ければフラッシュも標準装備しています。
僕は飲食店でよく料理写真を撮るのですが、そういう用途で使う場合、デジタル一眼じゃあ目立ち過ぎて嫌なんですよね。 カメラバッグからあの大きいカメラを取りだしてパシャパシャと音を出しながら撮影なんてできやしませんから。
起動が速い
このカメラの特徴として、レンズバリアーがないタイプなので、起動した時にレンズが飛び出してきません。 そのぶんのタイムロスが全くないので、起動時間がめちゃくちゃ速いんですよ。
スペック上の起動速度も 0.5秒。
電源を入れたら本当にすぐ撮影することができます。
このカメラはレンズバリアがないので、いちいちレンズキャップをしないといけないと思う方もいるかもしれませんが、僕は使ってません。 基本的には保護フィルターをつけた上でフジツボフードもつけていますので、いちいちなにかを外したりする必要はありません。もちろんレンズに傷もついてません。
撮りたい時にパッと撮れるし、撮り終わってからもすぐにしまうことができます。 レンズが飛び出してくるタイプだと、出す時も、しまう時も、ちょっと待たないといけませんから、意外と煩わしいんですよ。
地味に良いポイントです。
意外と寄れる
X70の最短撮影距離は10cmです。
これは単焦点レンズとしては、かなり画期的な距離だと思います。 ズームレンズやマクロレンズなら、それなりに寄れるレンズもありますが、単焦点レンズは描画優先だからか、寄れない場合がほとんどです。寄れても30cmとか。
しかも、X70はデジタルテレコン機能がありますから、標準画角で物足りなかったら、50mmのテレコンを使えば更にズームして撮影できます。50mmで10cmまで寄れれば、マクロ的な使い方でもしない限りは問題ないズーム能力です。
スナップ写真って意外と近寄って撮りたいシーンは多いんです。料理だったり、自撮りスナップだったり。
単焦点レンズの描画能力を持ちつつ、しっかり寄れる。
いいですよ、これ。
使いにくい点
性能面ではほぼ不満はないのですが、操作面で2つ、ちょっとした不満があります。
電源スイッチが操作しにくい
電源スイッチの突起が浅いので、ON/OFFが少しだけやりにくいです。
たまに滑ったり、どちらに動かすとONだったか分からなくなったりします。
このあたりのインターフェースは、パナソニックやソニーのほうが分かってるなぁという印象です。
メニューの左ボタンが押しにくい
これは正直、完全な欠陥ですね。
メニューボタン周りの上下左右のボタンは、ただでさえ押しにくいのに、左ボタンについては更に、チルト液晶の出っ張りが邪魔で非常に押しにくいです。
この4つのボタンは好きな機能を割り当てられるんどえすが、左ボタンはとにかく押しにくいので全く使ってません。というか、使う気になれません。
その他、気になる点について
手ブレ補正ないけど大丈夫?
僕が購入前にちょっと心配だった点なのですが、使ってみるとほとんど問題なかったです。
スローシャッターでも使わない限り、普段の撮影でブレる事はまずない感じ。夜にオートで撮るとさすがに注意が必要ですが、これは他のコンデジだって一緒です。
コンデジの手ブレ補正ってそれほど強力じゃないので、そんなに変わらないんですよ。
動画を撮ろうと思ったら、ちょっと心もとない感じはしますけど、静止画を撮るぶんには気にならないですね。
ズームできないと不便じゃない?
これは用途によるんですが、僕はほとんどズームを使わないので、なくても困ってません。
ズームを使う時って自分が動けないような場合ですけど、そういうシーンは僕の場合、ミラーレス一眼を使ってますからね。
コンデジって、いつも持ち歩いてサッと撮るだけじゃないですか。そういう用途だとおおよそは28mmでOKなんですよ。
どうしてもズームしたければ、デジタルテレコンで50mmまで使えますし。
ファインダーがないけど屋外ではどう?
これも特に困ってないです。
屋外で何枚も撮るようなシーンって、本気撮りの場合なので、そういう時はミラーレス一眼ですし。
X70だけで全てをやろうとしたら困るんでしょうが、サブカメラとして使ってますから問題ないです。
AF速度はどう? 暗所で迷ったりする?
AF速度はおおむね良好な部類だと思います。
僕が今まで使ってきたカメラは、Nikon D5500、Panasonic LX100ですが、この2つと比べて勝っているとまでは思いませんが、極端に遅いとも感じません。
屋内での撮影でも気にならないレベルですね。
ただ、白色の被写体だけは相変わらずちょっと弱い印象は受けます。白い皿、ミルク、などは露出を少し下げないと迷うことが多いです。ここは今後改善してほしいですね。
総評:デジイチとの2台体制撮りに最適なカメラ
細かな設定などはあまり使っていませんが、コンデジはパッと撮れてなんぼですので、これでいいと思ってます。 サッと取りだして、すぐ起動できて、それで撮った写真がとても綺麗。 これだけでいいんですよね、コンデジって。 本気で撮るならデジイチやミラーレスを使うわけなのでね。
でも、思うのは、
『これだけ綺麗な写真を撮れれば、標準域の画角はデジイチじゃなくてX70でいいかも。』
ってことです。
高速連射やスローシャッターでの撮影でもしない限りは十分なスペックなんですよね。 そこで、特に僕がオススメする使い方は「デジイチとの2台体制撮り」です。
以前、イベント撮影をした時、ミラーレスには中望遠レンズをつけて、標準域はX70で撮影してみたのですが、これが結構良かったです。 デジイチ2台だと、ネックストラップをクロスでかけることになってかなり煩わしいのですが、片方がコンデジならポーチに入りますから機動性が全然違うんですよ。
しかも「APS-C」「単焦点で綺麗な描画」「起動速い」「F2.8で結構明るい」「寄れる」「テレコンで画角変更できる」ですから、使い勝手も上々。 他社の1型センサーコンデジにはできない使い方だと思います。
もちろん、スナップ写真を撮るカメラとしても優秀なので、普段はこれ1つで十分な写真が撮れます。
静止画がメインであれば、本当にオススメできるカメラですよ!