キヤノンからミラーレス一眼カメラ「EOS Kiss M」が発売されましたね。
名前にKissという冠がつくということで、キヤノンが本格的にミラーレス市場に力を入れてきたことが分かるカメラです。
スペック的にはエントリー機なのと、キヤノンのレンズを持っているわけでもないので、個人的にはあまり興味がなかったのですが、ミラーレス市場への影響という点では、なかなかのインパクトだなぁと感じてきました。
スペック比較
他のカメラと、主要スペックを簡単にだけ比較してみます。
機能 | EOS Kiss M | EOS Kiss X9 | PowerShot G1X Mark3 |
---|---|---|---|
価格 | ダブルズームキット 約11万円 |
ダブルズームキット 約8万円 |
約11万円 |
型式 | APS-C CMOSセンサー |
APS-C CMOSセンサー |
APS-C CMOSセンサー |
有効画素数 | 2,410万画素 | 2,420万画素 | 2,420万画素 |
重量 | 351g | 406g | 375g |
AF | デュアルピクセルCMOS | TTL二次結像位相差検出 | デュアルピクセルCMOS |
ISO感度 | 100~25600 | 100~25600 | 100~25600 |
動画 | 4K 24p FHD 60p/30p/24p HD 120p/60p |
FHD 60p/50p/30p/25p/24p HD 60p/50p/30p/25p |
FHD 60p/30p/24p HD 30p |
価格については、EOS Kiss Mはちょっと高めかなぁという印象です。一眼レフよりも1ランクくらい高いし、他社ミラーレスと比べても、オリンパスのエントリー機であるPENシリーズと比べると、ちょっと割高感はあります。 まぁPENシリーズとはセンサーサイズがAPS-Cとm4/3という違いがありますが。
同じAPS-Cセンサーであるソニーのα6500と比べると、似たレンズ2本と合わせて20万円オーバーですから、断然安くはあります。
キヤノン内で比べるとすれば、やはり圧倒的なサイズの小ささでしょうか。一眼レフだと、小さいと言われるEOS KissのXシリーズですら、EOS Kiss Mからすれば大きいと感じます。この差は、さすがミラーレスという感じ。
コンデジであるG1X Mark3と比べても、サイズ感では一緒。コンデジと一緒ってすごいですね。重量については、G1Xはレンズ込みの重量ですから、レンズを装着すればさすがにG1Xが軽い。
動画については、最新機種だけだって4K撮影ができます。小型なので24pが限界なのでしょうが、4Kで撮れることが重要かもしれません。
EOS Kiss Mの狙い所
さて。
こう見たときに、EOS Kiss Mってどういった層が買う機種なんでしょう。
エントリー機ですから、初めてカメラを買うような人なのか。でも、現時点では、ダブルズームキット込みで10万円超えというのはちょっと敷居が高い気もします。PENシリーズなら、中古を探せばダブルズームキットが4〜5万で手に入ってしまいます。センサーサイズの優位性があるとは言っても、初心者にはAPS-Cとマイクロフォーサーズの画質の違いなんて分かりません。てか、正直、僕も分かりません。この価格差は、やはり大きいかなぁと思います。
では、中級者以上向けのサブ機なのか。キヤノンの強みは、なんといっても、一眼レフ機でのシェアですから、昔からずっとキヤノンのカメラを使っている人はたくさんいます。そういう人が、普段のスナップ用に小さなカメラが欲しいとなった時に買うカメラなのか。
これもちょっと違う気がします。キヤノンユーザーであれば、EFマウントのレンズをマウントアダプター付きで使えるというメリットがありますが、カメラ本体が小さすぎて、EFマウントのレンズとのバランスが非常に悪そうです。そうなると、手で持って写そうとした時に逆に撮りづらいということになりそう。コンパクトなのがいい点なのに、コンパクトにならないし。
でも一点。
この小ささだけは、とんでもないですよね。APS-Cセンサーでこの小ささは他にありません。オリンパスやパナソニックのミラーレスは同じように小さいものがありますが、センサーは一回り小さいマイクロフォーサーズです。パソコンで言うところのCPUみたいなもので、センサーサイズの差には超えられない壁がありますから、ここを重視する場合には代えがたい特徴になるかもしれません。
現時点では、ミラーレスのエントリー機といえば、オリンパスのPENか、パナソニックのGFあたりですが、将来的にキヤノンがミラーレス用の小型レンズEF-Mマウントが豊富になってきたとすれば。そして、カメラ本体も中古市場に潤沢になってきたとすれば。
マイクロフォーサーズの市場を、APS-Cであるキヤノンが食っていくことは十分に考えられます。
というか、現時点でも、ミラーレス一眼のシェアは、1位がオリンパス、2位がキヤノンだそうです。これ、僕はびっくりしたんですけどね。
ミラーレスの2017年シェアで、2位がキヤノンって意味が分からないんだよなぁ。カメラを趣味にしている人でキヤノンのミラーレスを使う人ってどんだけいるんだろう。一般層がネームバリューで安価モデルを買ってるってこと?https://t.co/9utqqXc6CP
— 広野ヨウ (@mayoinu) 2018年3月5日
まだそれほど力を入れていなかった時点で、このシェアですから、キヤノンのブランド力って凄いと思います。カメラに詳しくない人は、とりあえずキヤノンを買っておけば安心感はあるのかもしれません。
EOS Kiss Mは、今の時点で爆発的に売れるカメラではないように思いますが、キヤノンがAPS-Cミラーレスに本気を出したというメッセージにもなるこのカメラの発売によって、数年後は、普通にシェア1位になってるかもしれませんね。
あと、売り方も上手い。フラッグシップ機じゃなくて、エントリー機からリリースするのに貫禄を感じます。今のミラーレス界隈は、フラッグシップ祭ですからね。 ソニーのαシリーズ、パナソニックのGHシリーズ、オリパスのOM-Dシリーズ、富士フイルムのXシリーズなどなど。カメラ本体だけで20万円超えどころか、30万超えしている状況で、ただ一人、キヤノンがじわっと足場を固めにきているのが特徴的。
フルサイズミラーレスは、しばらくソニーの独壇場だとは思いますが、その下のカテゴリで、マイクロフォーサーズとAPS-Cのどちらが残っていくのか。
最近は写真機能だけではなく、動画機能もそれなりに注目されつつあるので、単にセンサーサイズが大きければいいというわけではない面もあります。小型センサーならではの優位性もあったりして。
あとがき
雑談なので、まぁ結論があるわけではありませんが。
キヤノンがミラーレス市場に本格参入してくることは多いに歓迎です。今までのミラーレス市場は、画質最優先ならフルサイズのソニー、そこまで求めないけど、システムのコンパクトさと独自の色味が欲しいならAPS-Cの富士フイルム、とにかく小型でコンパクトにしたいならマイクロフォーサーズのオリンパスかパナソニック、といった感じに思えます。ある意味、それぞれがうまく別れてセンサーサイズごとの棲み分けがされていたように思います。いや、逆か。それぞれが隙間を狙っていった結果、うまく分配された感じかもしれません。
そこに最大手キヤノンがAPS-Cで入って来たという。
ちょっといろいろ脱線しましたが、「EOS Kiss M」の登場は、カメラ本体のスペックうんぬんというよりも、ミラーレス市場が今年以降、どんどん活発な変化をしていって、一眼レフとの交代を感じさせてくれる発表だと感じました。
あとはニコンがどう動くか。今年中にフルサイズミラーレス発表という話もありますが。
オリンパスも、更に強力な手ぶれ補正を実現できそうだという噂もあったりして。
本当にどうなりますかね。
消費者としては、楽しみに妄想しております。